薬局だより

25.04.17 / 薬局だより / Author:

五十肩とは

加齢による老化現象と誤解されがちですが、治療には健康保険も適応されているれっきとした病気で、正式名称は「肩関節周囲炎」といいます。画像診断などの診断技術が向上した現在は、原因が腱板断裂などはっきりとした診断名がつけられるものは除外され、明らかな原因がないのに肩の痛みが生じ、徐々に可動域制限が起きてくる疾患を五十肩といいます。

★五十肩の病態と間違えやすい症状の区別

肩が痛いという症状のため、五十肩は肩こりと混同されることがありますが、この二つは別な疾患であり、痛む部位も異なります。肩こりでは首の周囲の痛み、頭や首の回りが重く、だるくなります。しかし、五十肩は「肩が痛い」ことに加え、その痛みのせいで腕が上がらないという「可動域制限」を併せ持った病態です。

★五十肩の経過と重症化リスク因子

五十肩の経過は、急性期・慢性期・回復期の3段階に分けられます。炎症が強く痛みがある急性期は発症~3か月。痛みが強くなるにつれて腕が動く範囲も狭くなっていきます。発症3~6か月は慢性期で、痛みはそれほど強くありませんが、肩や腕を動かさないでいると次第に拘縮して動きにくくなっていきます。そして発症6か月以降が回復期で、痛みも薄れ徐々に腕も動くようになっていきます。発症から2年以上を過ぎても痛みが取れない人や、たとえ痛みが消えても、肩関節内の組織が癒着して可動域が制限され、肩や腕の動きが悪い人がいます。

★加齢で生じた棘と擦れて炎症に

五十肩には明らかな原因がないといわれてきましたが、現在では、加齢によって肩関節の周囲が変性し、炎症が起こることが肩の痛みを引き起こすと考えられています。さらに、拘縮肩となる原因の一つは、肩関節の変形で生じた小さな棘が、肩の筋肉のすじである腱板を傷つけることであることがわかってきました。肩の中には腱板という筋肉があり、これが腕を上げるという動作で大きな役割を果たしています。ところが、肩や腕を動かすたびにこの棘によって腱板が擦れ傷ついていきます。そのため炎症が起こり痛むようになるのです。また、関節内には骨や筋肉が動きやすくなるようにいわゆる潤滑油である関節液が分泌されているのですが、中高年になるにしたがって減少していきます。加齢やこうした事情による個人差があるため、40歳で五十肩になる人もいれば70歳になって五十肩になる人もいます。

★治療の基本はリハビリとヒアルロン酸の注射

五十肩は一朝一夕に治るものではありません。治療の基本はリハビリテーション(以下、リハビリ)とヒアルロン酸の注射です。誰でも簡単にできるリハビリの一つが「おじぎ体操」です。例えば右側に症状がある場合、左手を椅子や机に置いて体を支え、右腕の力を抜いて、象の鼻のように手が地面につくくらいブラブラと回します。この体操には肩の可動域を広げて痛みを和らげる効果があります。

★拘縮肩も内視鏡治療で完治

リハビリを半年間続けても腕を前や横に90度以上上げられない場合は重症の拘縮肩と考えられるので、内視鏡治療の対象となります。医師はモニターに映し出された関節内部の画像を見ながら、痛みや炎症の原因となっている肩関節の棘を除去し、可動域制限の原因となっている肩関節内の癒着した組織を剥がす手術を行います。五十肩の痛みから解放されるには、早期受診と適切な治療が不可欠です。同じ治療を半年以上行って全く効果がなかった場合は違う選択肢を考えた方がいいでしょう。

 

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