新任医師のご紹介

11.05.16 / 医学コラム / Author:

平野DR平成28年5月1日より当院で勤務しています院長補佐の平野  宏先生です。平野先生よりエッセイをいただきましたので、ご紹介かたがた以下に掲載させていただきます。尚、以降もコラムとして随時掲載していきます。  

 

 

 

           『現在・過去・未来』

「現在」は刻々と「過去」に移り去り、「未来」は次から次と「現在」になり、そして「過去」になってしまう。当然、人は「現在」にだけ生きているのであり、“これまで生きてきたように今を生きている”のである。こんな当たり前のことを真剣に考えている。老人施設のデイケアーで、通所リハビリに通う利用者の“リハビリ会議”に参加している。利用者とその家族、理学療法士、ケアマネージャー、介護士、介護福祉器具業者、それに医師が加わって、一人30分ずつ一日7-8人ほどの利用者で実施される。在宅暮らしの利用者は高齢であり、半数以上が「認知症」と診断されている。会議では医者として意見を求められるが、認知症の治療や生活支援は難しくいつも頭を抱えている。“窮鼠猫を噛む”の心境で、新たな認知症の“病態”を考えるに至った。、認知症は「現在」から「過去」にさかのぼって健忘し、年相応の物忘れは「現在」から「未来」のことを忘れてしまう。多くの認知症患者と介護家族の訴えを聞いていると、「過去」のことなど忘れても、「現在」を生きていけるのではないか・・と思うようになった。「過去は忘れて、これから頑張って生きていこう」という励ましの言葉もあるではないか。昔の思い出や“しがらみ”などなくても生きていける。認知症患者でも、年相応の健忘症も併せもつことに気がついた(当たり前のことではあるが・・)。実は、認知症患者で最も困ることは、「過去」ではなく「現在」「未来」の物忘れなのである。今日のことが上手く記憶されない。だから「過去」は生まれないし、「未来」が「現在」になれないのである。そこで会議で新しい認知症対策を提案してみた。『もう「過去」は忘れて「現在」を呼び戻そうではないか。脳だけで覚えられなければ、目/耳などを使って体で覚えて記憶しよう。そのためには毎日を同じスケジュールで繰り返しの時間を過ごす。そうすれば一日を実感でき、今日が生まれ「現在」が蘇るのではないか』。小手先の“脳トレ”などよりも、一日の暮らしをトレーニングするほうが有効だと考えたのである。認知症だけでなく年相応の物忘れ≫も、“習うよりも慣れろ”の“日常”リハビリが必要である。

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