Dr.平野の医学コラム第2号

24.05.16 / 医学コラム / Author:

楽しく仕事をやる為には 

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勤務する養護老人ホーム(特養)での話。もう半年で100歳になるお婆ちゃんが入所している。

んだん口から食物や水分が摂取しづらくなってきた。介護士さんは2時間もかけて、必死の思い

で食事介助に当たっている。前回の回診のときに、ロビーにいたその介護士さんが訴えてきた。

「何とか食べられるようにして、100歳まで生かしてください」と。彼女の目つきは真剣そのも

のであった。特養では通常は施行しない点滴注射、その3日間の指示をだした。脱水も重なってい

たのかその直後から元気を取り戻し、介護人の差し出す食事に口を大きく開けて含み、噛んで、の

み込むようになった。本日回診の際に、その介護士さんが部屋に入ってきて言った。「先生ありが

とうございました。私もとっても“嬉しい”です。このような入所者さんの姿をみると、介護の仕事

が“楽しく”なります」と。私も介護士さんのこの言葉を聞いて“嬉しく”なり、老人施設で働くこと

の「楽しみ」を覚えた。喜びや快い気持ちをあらわす表現に、「嬉しい」や「楽しい」がある。こ

の二つの表現には違いがあると思う。例えば、久しぶりに友達に会えたら「嬉しい」ですし、その

友達と懐かしい話に花が咲いたら「楽しい」時間になる。「嬉しい」はその出来事に対しての直接

的な反応で、その出来事が起こった瞬間に感じる気持ち。一方、「楽しい」はその出来事を通して、

継続的に感じる気持ちを表している。友達と会えたその瞬間に「うれしい」と感じ、一緒に時間を

ごしたことによって「楽しい」という気持ちが湧いてくるのである。また「嬉しい」はその人自

身において感じるもので、個人的な感情である。「楽しい」はその時間を過ごした人が複数いれば、

その気持ちを共有することもできる。「嬉しい」の語源は【心笑みし(うらえみし)】という説が

る。「心」は体の内側、表ではなく”うら”にあるので、古くは「心」を“うら”と呼んでいた。

“心が笑う”ことを『心笑みし』と言って「うれしい」になった。また、「楽しい」は【手伸し(た

のし)】が由来ではないか。古代から人々は喜びを舞いや踊りで表現してきました。「楽しむ」と

いうのも【手伸舞(たのしまふ)】で、手を伸ばして喜び舞うことが、「楽しい」「楽しむ」に通

じたようである。自分の心が笑うと「うれしい」気持ちになり、皆で一緒に手を伸ばして喜べば

「楽しい」気持ちになる、ということだと思う。勤務する病院の職員研修会で『楽しく仕事をやる

ためにはー”生業“と”仕事“と”趣味“』の公演を依頼された。特養でのこのエピソードを話題提供し

うと思った。お金になる“生業” の中にお金にならない“仕事”を見つけ出す術を話そうと思って

いる。

 

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